Emotional Perception AI判決に従い改訂された英国特許ガイドライン

By Greg Ward, パートナー and Marie-Alexis Mezin, Trainee Patent Attorney

この記事では、英国のEmotional Perception AI Ltd v Comptroller-General of Patents, Designs and Trade Marks [2024] EWCA Civ 825事件の控訴院判決に従い改訂された、人工知能(AI)に関する特許出願の審査ガイドラインの主な変更点について検討していきます。

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グレッグ・ウォード | Connect on LinkedIn | gward@hlk-ip.com 

マリー=アレクシス・メジン | Connect on LinkedIn | mmezin@hlk-ip.com

昨日、英国知的財産庁(UKIPO)は、Emotional Perception AI Ltd v Comptroller-General of Patents, Designs and Trade Marks [2024] EWCA Civ 825事件の控訴院判決に従い改訂された、人工知能(AI)に関する特許出願の審査ガイドラインを公表しました。既にお知らせしたように、控訴院は、Emotional Perceptionの人工ニューラルネットワーク(ANN)発明を特許可能と認定した高等法院の先の判決を破棄しています。

今回の改訂は、ガイドラインを現在の法律の状況に合わせるためのものです。当然ながら英国最高法院は、ガイドライン改訂のきっかけとなった英国控訴院判決を不服としてEmotional Perceptionが上告することを許可しました。そのため、改訂されたガイドライン自体が近いうちに破棄される可能性もあります。

審査ガイドラインの主な変更

改訂されたガイドラインは、該当する項目4.4-4.7、4.23-4.28、5.12、5.33-5.37、7-7.10、8.5と8.6に実質的な変更が加えられています。これらの変更は、ソフトウェアによる抽象的アイディアの単なる実施以上の技術的貢献を実証するための要件について、明確にしようとするものです。

Emotional Perception事件の判決は、ANNおよび機械学習モデルが推薦システムや類似の用途に応用された場合、1977年英国特許法に基づきコンピュータプログラム「それ自体」の除外規定に該当することを再び宣言しました。したがって、審査ガイドラインのシナリオ13-15が修正され、これらの種類の発明を除外事項として明確に確認しています。シナリオ16と17も、控訴院により改められた特許性の判断基準を反映するために修正されました。

AI特許出願への影響

今回の改訂が意図する重要な点は、ガイドラインの項目4.27に控訴院判決が直接引用されているように、ANN発明は「他のコンピュータ利用発明よりも立場が良いわけでも悪いわけでもない」ということです。原則として、標準的なコンピュータプログラミング技術を用いて実施される発明と比べて、特別な配慮がAI(特にANN)利用発明に与えられるわけではありません。

これらの改訂は、概ね控訴院判決に基づいて予想されたものであり、AI関連発明の保護を求める際に、従来の計算プロセスを超える技術的貢献を実証する重要性を強調しています。

では、今後は?

これらの改訂に従い、AIおよびソフトウェア関連発明の保護を求める出願人は、自己の発明がソフトウェアの実行を超える具体的な技術的貢献をもたらす方法について、慎重に評価すべきです。今回の改訂は全体として、Emotional Perceptionの人工ニューラルネットワーク(ANN)発明を特許可能と認定した高等法院の判決以前における、AI利用発明に対するUKIPOの厳格な姿勢への回帰を要求するものです。今回の改訂が恒久的なものになるのか、それとも英国の最上位の裁判所によりANNが本質的に特許可能と認められる可能性が残されているのかは、まだ分かりません。

この事件の今までの重要な進展や英国でのAI特許取得全般に関する最新情報については、当事務所ウェブサイトのAI専用セクションでご確認ください。具体的なご質問があれば、当事務所のAIチームへお問い合わせください。

この記事は一般的な情報提供のみを目的としており、法的助言を構成するものではありません。この記事または他の主題に関して助言が必要な場合は、hlk@hlk-ip.comまたは担当のHLKアドバイザーまでご連絡ください。