統一特許裁判所は、特定の状況においては、英国などのUPC非参加国における侵害の申立についても、同裁判所が管轄権を有することを明確にしました。この記事では、アビー・バックラーが問題の事件を考察し、特許権者にとって何を意味するのかを見ていきます。
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英国はUPCの参加国ではありません。そのため、UPCの管轄権は英国には適用できないと常にみなされていました。しかし、UPCのデュッセルドルフ地方部は最近、特定の状況においては、侵害訴訟に関して英国(および他の非参加法域)に対する管轄権がUPCにあることを明確にしています。
問題の事件に係るFujifilmの欧州特許3594009号(「EP’009」)は、ドイツ(UPC参加国である)と英国(UPC参加国ではない)の両国で有効でした。Fujifilmは、全てドイツを拠点とするKodak企業グループを相手取って侵害訴訟を起こし、Kodakによるドイツと英国内での被疑侵害品の製造または販売を止めようとしました。Kodakは、EP’009の取消を求める反訴を提起し、その際に、ドイツはUPC参加国であるが、英国は参加国ではないため、EP’009の指定国である英国での侵害について判断する管轄権はUPCにはないと主張しています。
判決の大半は、取消の技術的争点に集中していました。UPCはEP’009を無効と認定し、ゆえに当該特許の取消を命じました。
それとは別に、デュッセルドルフ地方部は、英国での侵害問題を審理する管轄権があるかどうかについて検討しています。同裁判所は管轄権があると判断しました。ブリュッセル条約の第2条において、UPCの参加国に住所を有する者は、その国籍にかかわらず、当該参加国の裁判所で訴訟を起こされることになると規定されています。しかし、UPCはさらに踏み込んで、非参加国(例えば、英国)における侵害の申立についても、UPCは判断する管轄権を有すると判示したのです。したがって、特許権者は全ての侵害の申立をUPCに提起し、単一の法廷で包括的な救済を獲得できる可能性があります。
これはUPCによる管轄権の観点からかなり行き過ぎと思われるため、この判決が控訴されるかどうか(そうなると推測しますが)、さらに控訴審でどのように審理されるかを見守ることに関心が集まるでしょう。
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この記事は一般的な情報提供のみを目的としており、法的助言を構成するものではありません。この記事または統一特許裁判所に関連した他の話題について助言が必要な場合は、upc@hlk-ip.comまたは担当のHLKアドバイザーまでご連絡ください。