Emotional Perception AI:英国におけるAIの特許取得に関する最新情報
2023年12月初めの当事務所のレポートで、英国におけるAIの特許取得に関する状況が、英国高等法院により出された新しい肯定的判決(Emotional Perception AI Ltd v Comptroller-General of Patents, Designs and Trade Marks [2023] EWHC 2948 (Ch))に伴い、変化しているように見えることをお伝えしました。
以前は、UK IPO(英国知的財産庁)においてAI応用に関する特許出願が特許を取得するまでの道のりは極めて困難でした。なぜならこれらの出願は、「コンピュータ・プログラム」不特許事由により拒絶される可能性が高いためです。UK IPOはこれらの出願に関して、欧州特許庁(EPO)よりもさらに挑戦的な法域とみなされていました。しかし、英国高等法院は新しい肯定的判決において、人工ニューラルネットワーク即ちANN自体はコンピュータ・プログラムではなく、それゆえ「コンピュータ・プログラム」不特許事由には該当しない、という趣旨を述べています。この判決から1週間以内に、UK IPOは関連する法的ガイダンスを発表し、「同庁は特許性から除外される主題に関してANNの審査実務を直ちに変更していく。特許審査官は、英国特許法第1条(2)(c)の『コンピュータ・プログラム』不特許事由によりANNに関連する発明を拒絶すべきではない」と明確に述べています。
現在、新しい法的ガイダンスの後ではいくぶん意外なことに、UK IPOはEmotional Perception AI判決を不服として控訴院に控訴を請求し、受理されたと発表しました。つまり可能性として、この判決が覆されて、英国が再びANN発明にとって不利な法域となるか、この判決が承認され確定されるかということです。その一方で、UK IPOの声明は、法的ガイダンスが依然として有効であり、UK IPOは引き続きAI関連の特許出願を受理し審査すると述べています。あるUK IPO審査官は当事務所に対し、更なる通知があるまでは、新しい肯定的判決と法的ガイダンスがこれらの出願の審査に適用されることを確認してくれました。
英国の最高位の裁判所がAIは特許発明者になれないと判示-Dabus
2023年12月20日、英国の最高位の裁判所である英国最高法院は、Thaler v Comptroller General [2023] UKSC 49事件において、英国の特許法に基づく特許に関して人工知能は単独の発明者にはなれないと判示しました。この判決は、現行の英国法、とりわけ1977年特許法の要件として、発明が特許を受けるには、機械ではなく「自然人」が背後に存在しなければならないことを確認するものです。
この事件は、スティーブン・ターラー博士のDABUS AIにより自律的に創出された発明に関する2件の特許出願の特許性に関する上告でした。その判決において、問題となる争点は、AIにより自律的に創出されたイノベーションが特許を受けられるかどうかではなく、これらの特許出願にDABUS AIを単独発明者として記載することが許容可能かどうかであると指摘されました。予想どおり、英国最高法院における上告審は、許容されないと判断しました。
この上告事件は、特許出願にAIを発明者として記載できるかどうかの試金石としてターラー博士が世界中で提出した数多くの特許出願とその後の訴訟のひとつです。これまでのところ、南アフリカを除く世界中で敗訴しており、最初にオーストラリアで有利な判決が出されたものの、後に覆されました。
この記事は一般的な情報提供のみを目的としており、法的助言を構成するものではありません。この記事または他の主題に関して助言が必要な場合は、hlk@hlk-ip.comまたは担当のHLKアドバイザーまでご連絡ください。