現在、タンパク質構造の難問を解決するためのバイオインフォマティクス特許出願とAIの応用に何が起きているのかについて、ローリス・ケンプが解説します。
連絡先
生物学データは、複雑怪奇なことで有名です。病気を考えてみましょう。病気の原因が1つの遺伝子における1つの変異であることは稀で、むしろ複数の遺伝子にまたがる変異パターンであることが多いのです。スライド画像または放射線画像における癌の検出は、これらの画像における無数の特徴によって決まります。このような分野において、多くの研究者や診断医は、生物学データにおけるパターンを見出そうとするのですが、なにしろ私たち人間の脳にはあまりにも複雑すぎるのです。バイオインフォマティクスの世界は、生物学データが数学とコンピュータ解析に出会う研究分野です。現在、信じられないほど複雑なパターンを特定できるように高度に最適化されたAIツールが、より簡単に利用可能になったため、バイオインフォマティクスの分野は人気が高まっています。
当然のことながら、世界中の特許庁でバイオインフォマティクスに関する特許出願が急上昇しています。この分野には、人間によって数学が導き出される「従来の」バイオインフォマティクスと、AIによって数学が推論または展開されるAIバイオインフォマティクスがあります。下のグラフはこの急上昇を示しており、ケモインフォマティクス関連分野(計算化学、例えば化学反応における転移点を特定するソフトウェア)と、ヘルスインフォマティクス関連分野(デバイスへの関連性がより高いもの、例えば、患者のモニタリング用のソフトウェアやデバイス)が含まれています。

出典:Espacenet
*特許の出願から公開まで18か月の遅延があるため、2023年末までを含む
この急上昇している出願の内容は? バイオテック企業や製薬会社は何を保護しているのか?
その答えは様々で、タンパク質構造の決定;医薬品設計のための受容体構築;マイクロバイオームパターンやDNAパターンに基づく予後または診断;バイオ医薬品の薬物様特性の評価;NGSにおけるDNA修飾の検出;マイクロバイオームシーケンシングの正規化;癌細胞ワクチンを知らせるために癌細胞がその表面に提示するものの予測;コンピュータ上の脳(幼い子どもみたいに、お気に入りの特許出願があってはならないのですが、これは私たちのお気に入りの1つでした)などが挙げられます。
これらの出願を提出している企業は、様々なビジネスモデルを持っており、その一部が、プラットフォーム技術を提供する新薬研究企業などのサービスプロバイダーです。他には大手製薬会社やバイオテック企業も含まれており、各社の主要商品だけでなく、デジタルイノベーションも保護しています。例えば、製薬会社は自社の創薬プラットフォームも保護し、シーケンシング企業は独創的なソフトウェアも保護しています。さらに興味深いことに、中道的な製薬会社も存在しており、創薬パイプラインを有する一方で、独自のAI技術も販売しています(Schrӧdinger社やInsilico Medicine社など)。彼らの構築してきた専門知識と彼らが技術の販売を通して生み出している収益が、彼ら自身の臨床パイプラインの強化に有効利用できることを考えると、このようなビジネスモデルは理に適っています。
創薬は多額の費用を要する過酷な競争ですが、AIを活用することを中心に構築された新興の製薬会社が、頭角を現しはじめています。Insilico Medicine社は最近、生成AIを用いて設計された医薬品として、やはりAIにより発見された標的に結合する、レントサーチブの積極的な早期臨床試験を発表しました。
このように素晴らしい技術の知財保護の立場から、EPOは独創的な数学/コンピューティング/バイオ出願に極めて好意的であり、経験豊かな(私たちのようにこの技術を愛している)審査官たちを割り当てています。EPO判例法はまだ発展途上ですが、特にシーケンシング技術や癌ワクチンなどの分野において、異議申立が増えています。
この記事は一般的な情報提供のみを目的としており、法的助言を構成するものではありません。この記事または他の主題に関して助言が必要な場合は、hlk@hlk-ip.comまたは担当のHLKアドバイザーまでご連絡ください。