2024年12月18日の判決に従いUPCのミュンヘン地方部は、Huawaiの欧州特許第EP3611989号の侵害を理由に、Netgearに対する7か国差止命令をHuawaiに認めました。今回は、この事件がSEP(標準必須特許)所有者にとって何を意味するのかについて検討していきます。
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ここで報告されているように、UPCのミュンヘン地方部は2024年12月18日の判決において、Huawaiの欧州特許第EP3611989号の侵害を理由に、Netgearに対する7か国差止命令をHuawaiに認めました。この特許は、無線ネットワークにおける通信のWi-Fi 6規格の標準必須特許として扱われています。
標準必須特許(SEP)とは、技術標準の実施に不可欠とみなされる発明を保護する特許のことです。SEPは特別であり、市販品が当該標準を満たしていると主張することは、SEPで保護されている技術の使用を認めることに等しいため、SEP所有者による市場濫用を防ぐための方針が策定されています。とりわけSEP所有者は、公正、合理的かつ非差別的(FRAND)な条件で他者にライセンスを供与しなければなりません。
事件の背景
Netgearが当該特許のライセンスを必要としていることは当然とみなされました。Huawaiの侵害訴訟に対してNetgearは、ライセンス交渉に取り組んだものの、交渉がまとまらなかったのはHuawaiのせいだと抗弁しました。形式的に言えば、この抗弁には2つのファクターが含まれています。
- 欧州独占禁止法に基づくFRAND抗弁、および
- 契約法に基づくIEEE-LOA抗弁
被疑侵害者は、ライセンスを受ける権利を有し、FRANDライセンスを取得しようとしたが、特許権者により権利を認められなかった場合、FRAND抗弁を利用できます。
IEEE-LOA抗弁も同様に、米国電気電子学会(IEEE)標準(Wi-Fi 6など)にとって不可欠な特許に関する特許権者の義務、およびFRAND条件に基づくライセンス要件に関係しています。
いずれの抗弁も奏功しませんでした。とりわけ裁判所は、Huawaiが合理的なライセンス条件を提示し、他社より穏当なロイヤリティを要求することで知られていると指摘しました。Huawaiは既にWi-Fi 6 SEPの多数のライセンシーを抱えています。その一方で、「被告(Netgear)はライセンスに対する十分な意欲を示さず、交渉を先延ばしにした上に、自分たちの対案が拒絶された後、担保または十分な情報を提供しなかった」と、裁判所は述べました。さらにNetgearは、Huawaiにより提示されたライセンスがFRAND原則を満たさないと考える理由について、「実質的な回答」を示しませんでした。
ゆえに裁判所は、次のように結論づけました。
「議論の余地のない被告による特許侵害は……原告が求める法的結果を正当化する。特許侵害訴訟に関して原告により請求された差止命令が……発動されなければならない。なぜなら被告の過去の侵害を理由に……参加国において繰り返されるリスクがあるためである」。
この差し止め命令は、ドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、デンマーク、フィンランドおよびスウェーデンにおいて認められました。
要約
この判決では、行動と評判の影響が際立っています。正当なライセンサーとしてのHuawaiの良い評判が、重要なファクターとして同社に有利に働く一方で、Netgearの交渉における行動が、同社にとって不利に働きました。この判決は、ライセンス供与の準備が整っているSEP所有者にとって、ライセンス交渉を敬遠する、または先延ばしにする標準実施者に遭遇した際の戦略の一部として、UPC訴訟を考慮に入れる動機づけになるでしょう。さらにライセンシーにとっては、ライセンス交渉でどの程度まで先延ばしにできるかを再検討するきっかけにもなるでしょう。
この記事は一般的な情報提供のみを目的としており、法的助言を構成するものではありません。この記事または他の主題に関して助言が必要な場合は、hlk@hlk-ip.comまたは担当のHLKアドバイザーまでご連絡ください。