UPCからのオプトアウト:教訓

By Matthew Howell, パートナー

オプトアウトとオプトアウト撤回に関して規則の遵守が極めて重要である理由

マシュー・ハウエルが、なぜオプトアウトの権利を得る必要があるのかに関する教訓として、UPCの早期判決の一部を取り上げて説明します。

連絡先

マシュー・ハウエル
UPC
代理人 | 英国及び欧州特許弁理士

mhowell@hlk-ip.com
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「これらの早期判決は、オプトアウトとオプトアウト撤回の有効性を保証するために、関連する法律と規則の要件を厳守することがいかに重要かを強調しています」。

ほとんどの読者の方がご存知のように、欧州特許と特許出願を統一特許裁判所の管轄からオプトアウトすることが可能です。UPCの管轄からオプトアウトすることにより、特許権者は自己の欧州特許を、セントラルアタックによる一括取消(即ち、UPC制度に参加している全ての国における特許権の喪失)のリスクから守ることができます。

オプトアウト

オプトアウトは特許権者に人気があることが証明されました。UPCの報告によれば、同裁判所が2023年6月1日に運営を開始する前の3か月の「サンライズ期間」中に、合計418,095件のオプトアウト申請が受領されています。さらに横のグラフが示しているように、今もなお新しく特許付与または公告された出願に加え、サンライズ期間を逃した特許についても特許権者がオプトアウトしているため、相当数の欧州特許と特許出願が毎月オプトアウトされています。

オプトアウトの撤回

オプトアウトを撤回することも可能であり、特許権者がUPCで自己の特許権を行使する準備をしている場合に撤回する可能性があります。自分に対する侵害訴訟がUPCで提起される懸念がある人は、該当する特許のオプトアウト状況を監視すると良いでしょう。その特許のオプトアウトが撤回された場合、自分自身を防御する準備を急ぐ必要があるということです。

横のグラフは、UPCの運営開始以降に提出されたオプトアウト撤回申請の件数を示しています。

どのような規則か?

オプトアウトとオプトアウト撤回に関する規則は、単純明快とは言い難く、その過程は油断していると危険に満ちています。このような危険の一部が、UPCの早期判決により浮き彫りになっています。

  1. 特許のオプトアウトを有効にするには、当該特許に関する訴訟がUPCに提起される前にオプトアウトが登録されなければなりません。特許をオプトアウトする前にUPCで訴訟が提起された場合、もはや当該特許をUPCの管轄からオプトアウトすることは不可能です。

このことはCup&Cino vs Alpina Coffee Systems事件で確認されており、UPCのウィーン地方部は、仮差止命令の申請がUPCに提出された後にCup&Cino社の欧州特許に関して提出された(明らかに許可されない)オプトアウトについて、無効であることを確認しました。

2. オプトアウトは、該当する特許に関する法的手続が国内裁判所に提起されていない場合に限り、撤回することができます。

AIM Sport Vision vs. Supponer事件において、UPCのヘルシンキ地方部は、AIM Sport社による欧州特許のオプトアウトの撤回が、ドイツ国内裁判所で侵害および無効訴訟手続が開始された後に行われたため、たとえこれらの訴訟手続がUPCの運営開始前に提起されたとしても、無効であると判示しました。これが意味するのは、AIM Sport Vision社はこの特許に関して今ではUPCから締め出されているということです。将来におけるこの特許の侵害訴訟は、当該特許が有効な欧州加盟国の国内裁判所に提起しなければならず、UPCでの単一の訴訟よりかなり多くの費用を要するでしょう。

3. 欧州特許のオプトアウト申請は、当該特許が有効な全ての欧州加盟国における当該特許の全ての所有者により提出されなければなりません。

Toyota Motor Europe vs Neo Wireless事件において、オプトアウト申請は当該特許の所有者として当該特許の出願人の名前で提出されましたが、ドイツ国内特許の譲渡先であった当該特許出願のドイツ関係会社の名前が脱落していました。この事件におけるオプトアウト申請は全ての特許所有者により提出されなかったため、パリ中央部は当該オプトアウトを無効と判示しました。つまり、当該特許の有効性がUPCにおいて争われる可能性があり、一括取消につながるおそれがあるということです。

これらの早期判決は、オプトアウトとオプトアウト撤回の有効性を保証するために、関連する法律と規則の要件を厳守することがいかに重要かを強調しています。

オプトアウト問題について支援が必要な場合は、当事務所のUPCチームへご連絡ください。

データソース:UPC事件管理システム

この記事は一般的な情報提供のみを目的としており、法的助言を構成するものではありません。この記事または統一特許裁判所に関連する他の主題に関して助言が必要な場合は、hlk@hlk-ip.comまたは担当のHLKアドバイザーまでご連絡ください。

この記事は一般的な情報提供のみを目的としており、法的助言を構成するものではありません。この記事または他の主題に関して助言が必要な場合は、hlk@hlk-ip.comまたは担当のHLKアドバイザーまでご連絡ください。